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KEIアドバンス
KEI Higher Education Review

開成148名、筑波大付属駒場87名、灘86名、麻布79名、聖光学院78名、渋谷幕張74名、西大和学園73名、桜蔭72名、駒場東邦72名、日比谷51名。これは、2023年度入試における東大合格者上位10校と、その合格者数である。いずれも東京・首都圏および関西中心部の有名進学校だ。(数字は、大学通信による。東京大学 | 大学合格者 高校別ランキング | 大学通信オンライン (univ-online.com)


東大合格者はおよそ3,000名だが、その過半数はいわゆる上位の進学校が輩出しており、東京に近い都市部の高校が多いのも特徴的だ。地方の高校の在学生・出身者は、様々な点で不利な状況に置かれているという現状がわかる。


もちろん、何が何でも東大に合格することが、成績優秀な生徒の将来にとってベストな選択であるとは限らない。しかし、地方出身、非進学校出身だからという理由だけで、東大進学の希望すら絶たれてしまうことがあれば問題であるし、実際にそうした事例は枚挙にいとまがない。


学歴と学力差の背景には、親の所得格差、情報格差、出身地・出身校による「モチベーション」格差など、見えにくいが厳然とした格差が存在する。それを一番よく認識しているのは、格差と格闘した当事者である。


東大にUniversity of Tokyo Frontier Runners(UTFR)という学生団体がある。非進学校出身(東大合格者がいないか極めて少数)の東大生が立ち上げたサークルだ。同様の境遇を乗り越えて東大に進学した学生同士の交流と、東大や難関大への進学を目指し、地方で孤軍奮闘する高校生たちを応援する団体である。

・リンク:University of Tokyo Frontier Runners – 〜あなたに一番近い東大生集団〜 (utfr-todai.com)


圧倒的な文化資本をもつ一部のエリートだけが東大に進学する状況は、格差の固定化、人材の画一化を招くだろう。地方出身者、非進学校の生徒など、多様なバックグラウンドを持つ若者が、より多くエリート大学に進学できるようになるのは社会的に望ましいことだ。UTFRは、このような問題に、真正面から向かい合っている。



 

取材した人

清水さん(代表) 理系2年 群馬県出身。高崎市のT高校から現役合格。同[清水1] 校からの東大進学者は、約60年の歴史の中で清水さんが9人目。工学部進学志望。

柴田さん(編集長) 文系2年。宮城県仙台市のS高校出身。出身校には18年間で7名の東大合格者がいるが、東大合格者は稀で、超進学校とは言えない。理転して環境系の学問をやりたいと考えている。


Q:本日はよろしくお願いいたします。まず、代表の清水さんから、東大を目指すようになった経緯を教えてください。


清水 東大を目指したのは、高校3年になってからです。それまでは、進路ははっきりと決められておらず、数学は得意だから東工大を目指そうかな、と漠然と考えていました。高校3年生になるまでに成績が順調に伸びていったため、周囲も含め、東大を目指せるのではないか、となりました。ただ、英語がずっと苦手で、高校時代は英語の克服に苦心しました。東大になんとか合格できるレベルにまでは伸ばせたが、得意科目とまではいえません。


Q:私の経験則ですが、東大合格を決められるまで学力を伸長させることができる人は、押しなべて高い言語力があると思っています。清水さんは、英語は苦手と言いつつも、国語は得意だったのではないですか?


清水 いえ、古文や漢文は多少の勉強はしていましたが、共通テストすらままならないレベルでしたし、現代文は、正しく文章の意味を読み解くのに苦労しました。だから、国語がとくに得意というわけではなかったと思います。ただ、小学生の頃は、算数とか理科に関する本を読んではいました。


Q:進学校ではない環境で、どのように入試対策を行なったのでしょうか?


清水 入試対策は、ほとんど学校で行ないました。塾へは行っておらず、小中学生時に進研ゼミをやっていたくらいです。進研ゼミも、進学のためにしっかりやっていたというより、付録の教材に興味があってとっていたところが大きいです(笑)。


Q:ほぼ学校の勉強だけで東大合格とはすばらしいですね。


清水 高校では、放課後、毎日自習室で勉強をしていました。自分で考えてどうしてもわからないところは、近くにあった職員室に出向いて、先生を捕まえて質問していました。学校の先生をフル活用していましたね。受験計画についても、学校の進路指導の先生などから情報を得ていました。


Q:学校のリソースだけでも東大に合格できるという、良いロールモデルになっていますね。UTFRへ加入したきっかけは何でしたか?


清水 UTFRへの加入は、入学時に配布された冊子、「サークル一覧」のような冊子にUTFRの情報が載っていたのを見たことがきっかけです。自分が非進学校から東大を目指した経緯から、教育には興味がありました。そこで、UTFRの活動に参画することにしたのです。


Q:ありがとうございます。では、柴田さんにお聞きします。東大進学の経緯を教えてください。


柴田:東大進学を意識したのは高校1年の秋ころからです。私は1浪したのですが、現役時は、駿台(仙台校)の映像授業を取っていました。英語と国語だけです。それ以外はほぼ独学でした。1年間の浪人時代は、河合塾(仙台校)で受験勉強をしました。


Q:勉強法は誰かから教わりましたか? 受験戦略はどうのように立てたのですか?


柴田:勉強法は、様々な東大合格者の「合格体験記」を読み比べながら、自分なりのやり方を編み出しました。東進、河合塾などの合格体験記をよく参考にしていました。合格体験記を読み漁るなかで、UTFRの学生について書いてある『非進学校出身東大生が高校時代にしてたこと』(太田あや著:小学館刊)という本に出会います。そして自分も合格し、入学後にUTFRの門をたたくことになります。


Q:お二人とも、孤独に勉強を進められてきたんですね。UTFRは、どのような方針で活動しているのか教えてください。


A:2つの方針があります。一つ目は、非進学校出身学生同士の交流です。数人から数十人規模で同級生が入学してくる有名進学校出身の学生は、入学当初から友人、知り合い、先輩がたくさんいて、人的リソースに恵まれています。しかし、私たちのような、非進学校出身者などは、知り合いがおらず、孤立しがちです。そのような学生同士がつながり、孤立させないようにするのが、1つ目の活動目的です。


二つ目は、教育支援です。ただ、支援といっても、教科としての勉強を教えるのではなく、啓発活動といったらよいでしょうか。具体的には、非進学校や地方に出向いて、東京大学や、東大生の実像を知ってもらうための活動をしています。向学心や進学意欲の高い人にモチベーションをもってもらえるような会合の実施などがメインですね。非進学校の生徒は、もともと孤独で、能力や向学心があるにも関わらず、周囲の無知や反対によって進学機会を奪われることもあります。自分たちの経験を話すことで、勇気とやる気を持ってもらうのが狙いです。


また、合格体験記の発行も行なっています。私たちの活動を知ってもらうこと、そして同じような境遇の皆さんに勉強法などの参考にしてもらうことを目的としています。


Q:合格体験記は、5月祭で販売されていましたね。私も購入させていただき、目を通してみました。体験記は、何巻まで出ているんですか?


A:全8巻です。基本的に、編集部からのダメ出しは一切せず、著者の自由に任せて執筆してもらっています。その分、赤裸々な受験生の内実がわかるような体験記になっているのが他にはない特長です。


Q:サークルの活動は、とても公共性が高いと思いますが、大学やその他団体などからの資金援助はあるのでしょうか?


A:いえ、大学などからの資金援助はありません。UTFRは、立ち上げから5年たちましたが、ようやく創設時のメンバーが社会人になった段階です。社会人のOB・OGからの個人的な資金援助はありますが、まだわずかです。


Q:活動資金はどのようにしてまかなっているのでしょうか?


A:活動のための資金収益のほとんどは、五月祭と駒場祭での合格体験記の売上です。コロナの最中は、売上が激減して、活動資金を社会人OB・OGに頼る必要がありました。しかし、今年は、体験記の売り上げでなんとか活動を回せそうです。


Q:学内外の他の団体との交流や関わりはあるのでしょうか?


A:直接的な関わりはありませんが、東大への女子進学率が低いことの社会的背景や問題を追究している団体#YourChoiceProjectとは何人かのメンバーが重複しています。#YourChoiceProjectは、本郷キャンパスが拠点の団体ですが、代表の方はじめ何名かがUFTRのメンバーです。


なお、他大学の団体との交流はありますが、情報交換程度であり、現在、協働のプロジェクトや、インカレでの活動のようなものは行っていません。その点、学生団体は、実働メンバーも2、3年の活動で常に入れ替わっていくので、数年を要するプロジェクトを継続的に前進させるには、特別なやり方や仕組みが必要になると思います。


Q:今年度の活動目標をおしえてください?


A:コロナ禍を経て、オンラインでの授業や面談のやり方が社会に浸透してきておりますので、今年は、オンラインでの高校生との交流会も実施していきたいと考えています。今まで関わってきた学校との継続的な交流に加えて、新規の対象校も増やしていく方針です。


Q:最後に、団体として発信していきたいことがあればお願いいたします。


清水 明確な基準がなく可視化しづらいとは言え、確かに進学校と非進学校、都会と地方では教育格差があるのが現状だと思います。進学に関する情報が少なかったり、可能性に気づけなかったりする人たち、つまり真に教育を必要としている人たちのために、私たちUTFRは活動をしています。この活動が教育格差の是正に少しでも貢献できればというのが私たちの願いです。


柴田 親の学歴や年収をはじめ、様々な家庭環境よって、はじめから進学を断念するような生徒も多いのが実情です。教育格差の問題とその解決への糸口を、私たちのような立場から発信していきたいと考えています。


Q:ありがとうございました。


(記事:原田広幸 KEIアドバンス コンサルタント)


※改めて創立時からの合格者を調べたところ自分が9人目でした。前年の2名を除くと2006年の1名が最後であったため、これを知る教員がほとんどいなかったのだと思います。 

原田広幸(KEIアドバンス コンサルタント)

オピニオン

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